自動車

【前編】メルセデス・ベンツ「S450」搭載技術について解説してみる

Pocket

 

 

メルセデス・ベンツなどのラグジュアリーブランドは最新技術や刷新された既存技術などを搭載した興味深い自動車を多く作っていますね。

 

ぼんじり

私は技術マニアなので最新技術てんこもりな自動車は大好き!

 

今回は先日、メルセデスが発表した「S450」に搭載されている直列6気筒エンジン48Vマイルドハイブリッドを始めとした革新的な技術について説明させていただきます。

説明が未熟な部分や主観的な内容が含まれていることもあるかと思います。ご指摘していただければ更新いたしますのでどうぞよろしくお願いします。

 

後編はこちらです↓

あわせて読みたい
【後編】メルセデス・ベンツ「S450」搭載技術について解説してみる  先日公開した前編に引き続きメルセデス「S450」に搭載されている技術について説明させていただきます。今回は48Vマイルドハイブ...

 

 
 

メルセデス・ベンツが新型S450発表・同日予約開始

2018年3月1日、メルセデス・ベンツ日本が新型直列6気筒エンジンにISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を組み合わせたパワートレインを搭載した「S450」「S450エクスクルーシブ」「S450ロング」の発表・予約注文の受け付けを開始しました。

 

ぼんじり

注目すべきは最近では見なくなって久しい

直列6気筒エンジンの採用!

 

直列6気筒エンジンは今回のマイルドハイブリッドとそれに付随する各種システムの電動化に対応するよう専用設計されたものとのこと。

48Vマイルドハイブリッドはこれからの欧州ハイブリッドカーのスタンダードとなる技術ですね。今回メルセデスが市場投入してきたことで、各メーカーもフラッグシップや主力車種に投入していくものと考えられます。

 

 

それでは注目の技術について説明していきます~。

 

直列6気筒エンジン M256型

冒頭でも紹介しましたが直列6気筒エンジンは今回新設計されたもの。メルセデスだと約20年ぶりの復活となります。

かつてはハイパワーモデルやフラッグシップモデルに採用されてきた直列6気筒エンジンですが、ここ十数年の間は衝突安全性やエンジンレイアウトの関係によりV型6気筒エンジンに代わられていました。

 

しかしここ数年では直6エンジンもかつての栄盛を取り戻しつつあります。背景にあるのは年々厳しくなっていく欧州排気ガス規制の存在です。日本でも比較的知名度が高いのはディーゼルエンジンの排ガス規制ですが、実はガソリンエンジンに関しても同様の規制が敷かれています。

 

排気ガスをきれいにするためには、排気系のシステムはもちろん、エンジンの設計から車内のレイアウトにまで気を配らなければなりません。その際には、本来直6エンジンよりも省スペースであったはずのV型エンジンがネックとなります。

 

V型エンジンは縦置きレイアウトであれば車体前後方向のスペースが直列エンジンに比べて少なく済みます。しかし、車幅方向はシリンダーがバンクされている分、直列エンジンに比べ幅があります。加えて、V型エンジンに排気ガス浄化システムを搭載する場合、各バンクごとにシステムが必要になり、車幅方向のスペースがさらに制限されてしまいます。その点、直6エンジンではV6で問題となったポイントが解消されます。

 

今回メルセデスで開発された直6エンジンは直列本来の給排気系のコンパクトさに加え、ネックであるはずの前後長が従来のV6エンジンと同等であったりと優れた空間効率を実現しています。直6エンジン本来の振動の少なさ、吹き上がりのスムーズさによる高級感も売りのひとつ。そしてCO2排出は従来比20%削減、出力は15%以上向上と環境性能と出力も向上させています。

 

ぼんじり

S460の環境性能と出力を生むため、エンジンに活用されている技術が以下の4つです。

直噴インジェクションシステム

ツインスクロールターボ

電動スーパーチャージャー

カムトロニック(可変バルブタイミング機構)

順に説明させていただきます。

 

記事トップ

直噴インジェクションシステム

もはや説明不要の欧州車ではおなじみの技術ですね。燃料供給系統のシステムのひとつです。

通常は吸気ポートを介して燃焼室に送られる燃料を直接燃焼室に送り込む設計のシステムで、見た目ではっきり違うのはインジェクターの搭載位置が燃焼室内にあるということですね。

メリットとしては燃焼が成層燃焼1)という状態で行われるため、シリンダー全体で見ると燃料よりも空気が非常に多い状態での燃焼(希薄燃焼2)、リーンバーンとも)が可能になります。これによりポンピングロス3)や冷却損失が低減します(燃費向上)。

さらにポートインジェクションに比べて圧縮比を高くすることができます。直噴エンジンでは燃焼室に送り込まれた燃料が気化潜熱4)により燃焼室内の温度を下げることに加え、圧縮行程では空気のみが圧縮されることにより、通常エンジンに比べノッキング5)が起こりにくいためできることです。圧縮比向上により、出力と燃費の両面でメリットがあります。

 

耐ノッキング性能の向上、空気充填効率の向上により、後述するターボやスーパーチャージャーといった過給器と相性がいいのも特徴のひとつです。

用語説明

1)成層燃焼 

→ シリンダー内で混合気に偏りがある状態での燃焼。主に燃焼可能な混合比率の混合気を点火プラグ付近に密集させて燃焼させる。

2)希薄燃焼(リーンバーン)

理論空燃比6)よりも薄い(リーン)混合気で運転している状態のこと。

 

3)ポンピングロス

→ 内燃機関の吸排気行程で発生するエネルギー損失のこと。吸気側の気圧と排気側の気圧に差がある場合に生じる。基本的に自然吸気エンジンは吸気側気圧<排気側気圧となる。昨今の技術では主に吸気側の気圧を上げることでポンピングロスを低減させている。ポンピングロス低減の方法としては過給器の搭載、EGR7)の搭載、可変バルブ機構などが挙げられる。

 

4)気化潜熱

→ 液体が気体に変わるときに周りから奪う熱のこと。気化熱とも。

 

5)ノッキング

→ エンジンが金属性の打撃音及び打撃的な振動を生じる現象のこと。混合気の圧縮に伴う燃焼室内温度の上昇により、燃料が自己着火し起こる。

 

6)理論空燃比

→ 混合気中の酸素と燃料が過不足なく反応する時の空燃比のこと。空気質量を燃料質量で割った際の比率が14.7となった状態。

 

7)EGR(exhaust gas recirculation)

→ 排気ガス再循環。排気ガスの一部を再度吸気へ循環させること。排気ガス中の有害物質を低減させるほか、ポンピングロスを低減させることで、燃費を向上させる。

 

 

 

 

ツインスクロールターボ

これまた今や当たり前となった技術のひとつですね。

ターボチャージャー8)の方式のひとつです。一般的なターボはタービンへ排気ガスが流れる経路はひとつですが、ツインスクロールターボはタービンへの流路が2つに分かれた構造をしています。エンジンの低回転域ではふたつのうちひとつの経路、高回転域ではふたつの経路を用いることで低回転域から高回転域まで効率的に過給を行います。

 

ツインスクロールターボは滑らかさとレスポンスの良さ、広い回転域での出力向上が特徴のターボシステムで、どちらかというとスポーツモデルに採用される傾向があります。しかしながらS450ではツインスクロールターボの性質に加え、電動スーパーチャージャー、ISGの搭載、さらにもともとの直列6気筒エンジンの性質も組み合わせることで、非常に滑らかで上質な走行フィーリングに仕立てています。用いる技術の使い方や組み合わせで自動車の味付けが変わるのは非常に興味深いですね!

 

用語説明

8)ターボチャージャー

→ 排気エネルギーを利用した過給器のこと。排気ガスの流れでタービンを回し、同軸に搭載した吸気側のコンプレッサーを作動させることで圧縮した空気を燃焼室内に送り込む機構。同じ排気量の自然吸気エンジンに比べ、高い出力を出せるようになるほか、本来無駄になっている排気エネルギーを回収することとなり、エネルギー効率が向上する。

用いるタービンや排気経路の径、取り回しによって効果的に過給が行われる回転数が変わる。過給が行われる回転数に達するまでにラグが生じる上、加速がアクセルと連動しないなどの短所がある。しかし本項で紹介したツインスクロールターボは広い回転域での過給とターボラグを低減した走行を実現する。なおどんなターボシステムであっても基本的なターボの性質は変わらず、ターボラグや過給効率の低い回転域がどうしても生まれてしまう。

 

記事トップ

電動スーパーチャージャー

上で紹介したターボチャージャーが排気エネルギーを用いて過給を行うのに対し、機械的なシステムで過給を行うのがこのスーパーチャージャーです。

スーパーチャージャーはエンジンからのエネルギーでタービンを駆動します。エンジン回転数に応じたリニアでレスポンスに優れた過給が持ち味です。しかしエンジンのエネルギーを元にしている以上、回転数が上がるほどに機械的損失が増加するため、高回転域での出力はターボチャージャーに比べて劣ります。しかしS450に搭載されているスーパーチャージャーはモーターにより駆動されるため、機械的損失が削減されている上、モーターを駆動する電力はブレーキ時の回生エネルギーで賄われているため、効率と環境性能の面でも優れています。

加えてS450ではスーパーチャージャーに加えターボチャージャーを搭載し、それぞれの得意な領域でそれぞれの短所を補う事ができるため、レスポンスの良さと高出力の両立が図られています。

 

カムトロニック(可変バルブタイミング機構)

上記の動画はメルセデス・ベンツに採用されているカムトロニックという機構の解説動画です。

 

可変バルブ機構はエンジンの回転数や運転負荷の程度に応じて吸排気バルブのリフト量と開閉タイミングを切り替える機構のことです。HondaのVTECに代表される高出力を発揮する目的での採用は有名ですが、近年の可変バルブ機構は主に環境性能を向上させる目的で採用されていることがほとんどです。

その中で特に多く採用されているのがミラーサイクル9)を実現する制御プロファイルです。低回転時にはリフト量を小さくし、ピストンが下死点に到達する前に吸気バルブを閉じることで圧縮比10)膨張比11)の燃焼を行います。これにより燃焼効率が向上し、燃費が改善されます。

 

ちなみに可変バルブ機構は現在では各社各々の名称、動作機構でセールスポイントとして売っていますが、どこもやっていることはほとんど同じです。

 

用語説明

9)ミラーサイクル

→ R.H.Millerが考案した内燃機関の燃焼概念。通常は圧縮比=膨張比である燃焼工程を、吸気バルブの開閉タイミングを変化させることで圧縮比<膨張比とし、安定した燃焼と高い燃焼効率を実現する。

 

10)圧縮比

→ 燃焼室の最も容積が大きくなる時の容量と、最も容積が小さくなる時の容量の比率を表す値のこと。一般的な熱機関の性能を推し量る指標のひとつ。レシプロエンジンでは燃焼室容積が最大となるピストン下死点の時の容積と、燃焼室容積が最小となるピストン上死点の時の容積の比率が圧縮比となる。

排気量が同じエンジンで比較した場合、圧縮比が高いほど燃焼時のピストン移動が大きくなる=ピストンを押し下げる圧力が大きくなるため、燃料から得られるエネルギーが多くなり、高出力、高トルクとなる。しかしガソリンエンジンでは圧縮比が高いほど圧縮工程での自己着火が起こるため、異常燃焼によるエンジン破損の恐れがある。そのためミラーサイクルを用いない通常の燃焼プロセスを用いたエンジンでは、圧縮比の範囲はある程度限られる。

 

11)膨張比

→ 混合気を圧縮し始めたときの容積と、下死点での容積の比のこと。通常の燃焼プロセスでは圧縮比=膨張比となる。近年ではミラーサイクルを用いることにより圧縮開始時の容積と最大燃焼時の容積に差を付けた燃焼が行えるようになった。

 

終わりに

前編はここまでです。

次回は48Vを始めとした電装システムについて説明させていただきます。

 

最後にもう一度言わせていただきます。

説明が未熟な部分や主観的な内容が含まれていることもあるかと思います。ご指摘していただければ更新いたしますのでどうぞよろしくお願いいたします。最後までお読み頂きありがとうございました。

 

ぼんじり

後編はこちらです↓

あわせて読みたい
【後編】メルセデス・ベンツ「S450」搭載技術について解説してみる  先日公開した前編に引き続きメルセデス「S450」に搭載されている技術について説明させていただきます。今回は48Vマイルドハイブ...

記事トップ

 

 
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。